広島で上映会成功

 ひろしま労働学校は、広島県労働組合交流センターの事業として14年目に入っています。
 ひろしま労働学校はマルクス主義の学習を中心に、労働現場の闘いの一助になるテーマで行ってきています。これまで、日韓連帯(=国際連帯)のテーマは、11月訪韓闘争の報告という形で何度か取り組んだことはありました。
 今第14期(2021年度)は、日韓連帯をテーマとし、参加者の拡大も目指して、公開講座として「あなたは蜘蛛を見たことがありますか」の上映会を企画しました。はじめて参加した労働者や、新聞に載った上映会の紹介を見て参加した労働者の参加も得て、大成功することが出来ました。
 映画の上映が終ったあと、コメンテーターの広島連帯ユニオン・宮原執行委員長より「映画を見る3つの視点」を提起しました。
 第1の視点は「旭非正規職支会の闘いについて」、旭硝子(現・AGC)という企業の犯罪性と、旭非正規支会の歴史、日韓労働者の共同闘争としての旭硝子闘争。第2の視点は「韓国の非正規職撤廃のたたかいの歴史的位置」、第3の視点は「立ち上がった労働者一人ひとりの姿」、映画では「ごく普通の労働者が自分たちの労働条件に怒り、労組を結成し、解雇されても団結 を守り、たたかいを継続し、ついに勝利を手にしていく」姿が写し出されている。日本の労働者にとっての意味をぜひ議論できればと思うとの提起を受けて、参加者で討論を行いました。

討論より

【A】
 初めて見た感想で、日本の労働運動と決定的に違うなという所をちょっと何点か、個人的な感想ですけど述べたいと思います。
 1つ目に、学生が学校のそういう教育課程の一環で、労働者の現場を通して労働について学んでちゃんと連帯に貢献する、そういう所を見て、私は非常に感動したんですよ。日本でもやっぱりそういう労働について学ぶというのは、労働と大学、労働と授業みたいな本当に形の上で、教科書に全然載ってないようなことを、労働者の現状とはかけ離れているという、そういう所しか私は知らないので。そういう現実とは対照的に、学生の方から
労働者の闘争現場に入っていくと。そういう連帯のあり方というのは、私は日本の労働者もこれは学んでいかなければいけないんじゃないかと思いました。
 2つ目なんですが、旭支会の労働者のこの七十数分の中で結構出てたのは、いろんな被解雇者が出て、多くの労働者が闘争現場を訪問して激励し合っているということなんですね。これはもうすごい連帯うらやましいという提起もあったんですけど、これは私も同じことを思ってまして、やっぱりユニオンとかでもいろんな労働者がいるんですけど、なかなかお互いの闘争現場に行ったり、職場を行き来するということはあんまり、なかなかそういう大々的な闘争のあった時ぐらいしかそういう、あんまり多いとは言えないと思うんですよ。そういう本当にお互いの闘っている場に入って励まし合うという、そういうところをもっとやっていきたいなというふうに思いました。
 最後3点目なんですけど、結構この韓国の労働者のなんかすごいいいなと思うのは、家族の話が出るんですよ。その中身が、本当に私もすごい経験があるんですよ、家族問題なんですよ、労働運動やっていくと。常に理解されない。もうあきらめて、解雇になったら次の職場を探す。そういうことばかり繰り返していると、労働者勝てないんだというふうに思いながらも、やっぱり一方で納得できない自分がいるんですけど、本当に彼らはつらいことが毎日毎日ずっとあったと思うんですよ。1日に6人も死んでいく、こういうことがずっと続いていくと。そういう中でも、本当に起こっていることはシビアなんですよ。そういうことがあるにもかかわらず、ああやって闘いを引き継いでいくという、このドキュメンタリーの映画を日本でも労働者が作れるようなそういう所に持っていきたいというのはもちろんあるんですけど、まずはやっぱり彼らがどういう闘いをやっているかということを、私たちがちゃんと学んで、ちゃんと職場で実践していくということが大切ではないかなというふうに思いました。
 さっき言われた、もっともっと外に出ていくと。私も職場の中を見るとやっぱりおもしろくないと、その前提として仕事がおもしろいと思ったことは実はない、やらされていると。そういうことで、労働者が主体性を発揮できるような運動にしていくということがやっぱり重要だと思います。今日はこういう機会をありがとうございました。

【B】
 映画は初めて見たんですけど、映画の最初の方で、火力発電所の事故で死んでしまったキムヨンギュンさんのお母さんが、あれ相手は政府の労働者かね、なんか制服を着てる姿の男の人に向かって、これは国がシステムとしてどんどん非正規にしていったと、で、安全対策なんか何もとってないのは分かってて、それを放置していたじゃないかということをまず詰め寄ってたと思うんです。ただ子どもが死んだ悲しみだけじゃなくて、ちゃんとなんでこんなことになったのかという所で闘おうとしているなと思って、で、映画の最後の方で、1周忌の場面じゃないかと思うんですけれど、政治と企業がグルになっちょると、グルになって持たざる庶民を殺してるじゃないかと。だから、持たざる者が闘うしかない、この世の中変えるしかないんだという決意を述べてたんですよね。これ本当にものすごい闘いをしてるなと思って、ちょっと感動しました。
 もう一つ同時に、そういう非正規で命の危険にさらされるような働き方をさせられている、亡くなったそのお子さんと同じ職場の同僚たちのそのまた親御さんという人たちもいらっしゃるわけでしょう。その人たちが、彼女の訴えをどういうふうに受け止めたのかなと、私はそこにちょっと関心があったんです。やっぱり仕事がこれしかないんだからしょうがないみたいな感じで黙ってたら、本当にもう殺されてしまうという、そういう思いを持って一緒に闘っていけるような運動ができたらいいなというふうに思うんです。やっぱり労働災害とか過労死とか、その家族の人たちとの関係というものを労働運動がどう作っていくかというのは非常に重要かなと思ってます。

受講レポートより

【1】
 家族の話、家族ぐるみのたたかい。この団結をくずさないためのたたかいをしっかりして、労組がかたまっている。いっしょに食事して、踊って、まだまだ、私たちは・・・と思いつつ、国鉄1047名闘争はそうやってきたから長くたたかえたんだなあとか思いました。
 チャホノ氏以外は新規雇用しますなどという条件は本当に許せませんが、あたりまえのように支会は拒否します。資本の手口や考えることは、進歩がないな、と思いました。

【2】
 AGC闘争については、よく耳にするけれどあまりちゃんと頭に入っていませんでしたが、映画がわかりやすかったです。超優遇された日本の資本が韓国の労働者を見せしめのように切り捨てているのは、本当に植民地あつかいで許せないです。
 それでも長期にわたる闘いを明るさを失なわず続けていることにとても感銘を受けます。日本の労働者が見習うべきところだと感じます。前に「人として生きよう」とい映画を見たとき、見おわって逆につらいような気持になったのを思いだしました。“苦しくても耐え続けることが素晴らしいこと”と言われているみたいな、そこの印象だけが残ってしまって・・・。団結して闘うことは、よろこびであり楽しいことなのだと、労組は労働者をはげます存在であってほしいです。

【3】
 支会長だけでなく現場組合員が、家族のことなど悩みを卒直に言って、生き生き語りながら、連帯しながら、解放的に闘っている姿がすばらしい。楽しそうだなと思いました。
 全教組も法外労組あつかい。旭非正規職支会も和解の内容は組合代表であるチャホノ支会長は雇用しない(労組を絶対認めない)というもので許せない。日本でも関生のようなまっとうな労働組合活動が犯罪とされている。でもそれは労働組合が資本にとって最も恐れる存在ということ。韓国でも日本でも同じ闘いをしているのだと思うし、資本、それを支える国家とは非和解だと改めて感じました。

【4】
 旭非正規職支会の闘いについて、組合員の人間味が出された良い映画だと感じました。どんなことを考えながら闘っているということが、組合員同志でも共有されているのだと思います。非正規職撤廃という闘いを全労働者の普遍的な闘いにして行く内容を持っているのは、分断に対して徹底的に闘っているからではないでしょうか。非正規の闘いについて、討論できたのは良かったと思います。

【5】
 労働者のプライド(ほこり)をかけて闘っている姿に胸が熱くなりました。インタビューの中で、初めて現場でシュプレヒコールをあげた初日が忘れられないとありました。管理職が何も言えなかったという経験をした 〜 それは労働者に力がある、解放されたという実感ができたんだと思いました。その経験が労働者には必要で、以前(昔)ストをした人達の話を聞くと、本当にうれしそうに「やったよー!」「おもしろかった」と言われます。
 解雇をもってしても、それを上まわる、つき抜けるような解放感をもてたら闘う労働組合はよみがえるのではと思えました。

【6】
 「持たざるものが社会を変えていくしかない」というお母さん(キム・ミスクさん)の言葉が胸にせまった。
 普通の労働者が闘う中で仲間を拡げながら、家族関係ものりこえながら、日常として闘争を継続する姿がリアルに伝わってきた。
 非正規労働者が社会を変革する主体であるという事が、韓国の闘いを通じて実感できる映画であった。

【7】
 映画で印象に残ったのは、冒頭でキム・ヨンギュンさんの母親キム・ミスクさんが雇用労働部長官を前に、国を弾劾している場面です。この弾劾を黙って聞き、最後に「二度とこうした事故が起こらないようにします」と言わざるをえなかった。その場では完全に力関係が変っていたように思います。そういう力関係の転換を日常の闘いを通してつくり上げていく中で、労働運動をよみがえらせていくことができるのではないかと感じました。
 また旭非正規職支会のそれぞれの労働者の発言、生き様を見て、動労千葉の分割・民営化に抗してストに立ち上がっていく頃の闘いとオーバーラップする印象も受けました。新自由主義の下で、闘い抜いていくこの日韓の闘いとその結合は重要だと思います。正規・非正規の分断を打ち破り、全世界の労働者の闘いで新自由主義を打倒していきましょう。
 そのために労働運動・労働組合の再生が必要で、日常不断に職場で闘い抜くことの重要性を改めて感じました。

【8】
 非正規職撤廃の闘いなど、厳しい現状の中でも労働者が生き生きと闘い抜く姿に感銘を受けました。コロナ禍で往来困難ですが、国際連帯の意義と重要性を改めて思います。
 AGC資本がチャホノ支会長を除いて正規雇用する、民主労総と金属労組に発展資金を出すと提案したのはまさに分断であり許せません。
 旭支会が自分たちで闘うだけでなく、闘争現場にかけつけて、クモのように網目を張りめぐらすのは「労働者の闘いの原点」でもあり、世界の労働者の心を捉えると思います。

【9】
 非正規職撤廃は、階級闘争の重要テーマであることを上映学習会を通じて確認した。
 世界的な新自由主義攻撃は、労働者の権利をどんどんふみつけ、より強搾取と労働者を人間扱いしない、とりわけ、もうからない、安全、衛生、教育や、労働の環境を劣悪にしていく。
 だからこそ、資本、権力と闘う労組の建設とその連帯として労組ネットワークが死活的であることを実感した。
 企業に殺されたキム・ヨンギュンさんの無念を、その母が「国の政治よって当たり前のように命が奪われていきます。一人一人の命がどれだけ大切ですか。政治と企業のグルになって持たざる庶民を殺しています。結局は持たざる人が変えなくはてはなりません。命をふみにじり、権利を奪う資本家たちを許せません!」というのは、全ての労働者階級の思いだと感じた。

【10】
 最近テレビのCMでよくAGCが流れています。わざわざ海外に工場をつくるのは、より安く、より好都合に事業を展開するため、低賃金で、労働法などの規制から自由になるため、そのことが映画からよくわかりました。かつての植民地支配に至った歴史と何が違うのでしょうか。
 一方で、非正規労働者が自らの手で、労働組合を結成し団結を守り抜きながら、人間らしく生きられる社会を目指して闘っておられる姿には、とても心が晴ればれするものを感じました。実際には、民主労組を非正規職中心の組合へ現場からつくり変えていくという過程とも重なったと思いますが、その底力は、高空篭城や門前闘争など粘り強い現場での闘いであるということがわかりました。
 日本でも非正規が増大し、賃金や労働時間、労働条件などが悪化していますが、今日の映画をみて「決して絶望ではない」と思えました。

【11】
 初めて視聴したかんそう を何点か述べます。
 一つ目に、学生が教育過程の一環で旭支会の労働者との連帯を表明した点です。日本でも大学の労働法の授業で「労働」を客観的に論じられる程度のもが大半であり、とても労働者の現状を伝えきれていないのが現実です。それとは対照的に、学生が労働者の闘争現場に入る姿勢は、日本の労働者も学ぶべき連帯の在り方だと思います。その連帯への反動としての、旭による学生への損害賠償請求は、絶対に許しません。
 二つ目に、旭支会の労働者が、多くの労働者の闘争現場を訪れて激励し合っている点です。ユニオンにも様々な業種の組合員がいますが、日常的にお互い現場(職場という意味でも闘争現場という意味でも)を行き来する機会は、多いとは言えない状況です。その様な現状から日本の労働者も一歩、踏み出して大きな闘いにしていく気概を持たなければと切に思います。
 三つ目に、闘争に立ち上がった労働者の表情が非常に生き生きとしている点です。家族との関係から過酷な労働現場の状況に至るまで、非常に辛い経験をしているのにもかかわらず、闘争を続けようと奮い立っていることです。最も労働者の現状を示しているテーマであり、今後も重要な論点になりうると思います。